cinema staff

出会いはロッキンオンジャパンの2008年11月か12月号あたり、new comerのコーナーで彼らが紹介されていたのが目に留まった。
自分は当時高校生。メンバーは大学生。
歌詞がいくつか抜粋されていて、「カフカ」「サイボーグ」「スティングレイ」「部室」「ダンスナンバー」という無機質な単語たちが並んでいた。これらがいったいどんな組み合わされ方をするのか、どんなサウンドに乗るのかが単純にものすごく気になった。そして残響レコードの所属だということは、あのバンドやあのバンド系かな?と想像した。
いざデビュー作のdocumentを買ってみると、音の激しさは想定の範囲内だったが乗っかる声は優しく素朴で、でもどことなく暗い。それがあまりにもミスマッチで、なんだこれは?かっこいいのかこれは?と良く分からなかったというのが第一印象。


2009年4月に初めてライブを観た。VINTAGE LEAGUE。どちらかというとシネマより少し前からハマっていたUNISONとPeople目当てで、cinema staffってあのバンドも来るんだ、行ってみようか程度のノリ。セトリはほぼdocumentの曲。小柄なギターの人がはちゃめちゃに暴れていて、ベースの人は手から血を出していた。みんな前髪長いし。

 

2010年、Symmetoronicaが発売された。今までCD1枚だけを繰り返し聴いていた所に新しく曲が増えたのが嬉しかった。大学生になり、自由な時間が増えて、色々なバンドのライブに行くようになり、ライブに行って音楽を生で聴くという行為の楽しさを知っていった。
シネマが北海道へ来る時は必ずライブへ足を運んだ。彼らの曲ももちろん生で聴けるのは楽しい。でもそれ以上に
「デビューした時を知っている者として、彼らとは一緒に走っていかなければならない」とか、「どうせなら札幌ライブ皆勤賞狙ってやろう」みたいな義務感やエゴがあったように今では思う。


2011年1月、スペースシャワー列伝
シャンペ、モールル、シネマ、plenty。
モールルで上がった熱はシネマの番になってもそのままで、前年に見たワンマンよりめちゃくちゃ盛り上がってた。(※個人の感想です)
終演後、物販に飯田さんと久野さんがいた。グッズにサインしてもらって、「documentから聴いてます、これからも応援します」的な無難な言葉をかけて、飯田さんに握手してもらった。当時まだ発売されて3年も経っていなかったdocumemtの名前を出して、少し驚いたような表情だったのはどうしてだろう。


そして2011年7月1日、セルフタイトル「cinema staff」のリリースツアー。
本編が終わり、アンコールが終わり、メンバーが捌けたものの拍手は止まない。フロアの照明がつき、はいもうドリンク交換して帰ってね、の空気になったところで再びステージへ出てきた彼ら。帰りかけていたけど慌てて戻ってくるお客さん。
「本当に時間がないので、1曲だけやって帰ります」そこで鳴らされた不協和音。つまりPoltergaist。時間がないなら別にやらなくたっていいダブルアンコール。しかしそこへ2分少々とただでさえ短いこの曲を更に爆速にして詰め込み駆け抜けた彼ら。 それまでは誠実かつクールに歌い上げていた飯田さんの、間奏のあの気怠さ。頭を殴られたような衝撃を味わった。そこで私は「cinema staffが、cinema staffのライブが好きだ」と確信した。

あの日の衝撃がどれだけ強かったかと言うと、丸1ヶ月シネマの曲しか聴けなくなった。間違って他のバンドの曲が流れようものなら、急いで飛ばした。それくらい。
大学へ行くときもバイト行くときもイヤホンから流すのは全部シネマ。私の2011年夏のテーマソングはほぼあのアルバムの中の曲。
じっくり聴き込んでいくうちに、You Equal Me、錆のテーマ、どうやら。こんな変わった曲作るバンド他にいるかよ!?とそこで初めてcinema staffというバンドが作る曲にはっきりと魅力を感じた。あの日がなかったらcinema staffというバンドは私の中で特に波風立てない、「普通にちょっと良いバンド」で終わっていたと思う。
クソ余談だが、当時、バイト先に鮮やかな水色のクロックスを履いて出勤してくる女の子がいた。
今でもどうやら を聴くと従業員入口の銀色のドアとその水色のクロックスを思い出す。

さすがに8/2からはもう1ヶ月経ったしそろそろ違うバンドも聴かなきゃ、とエルレを聴いた(らしい。当時のツイート。)

 

2013年6月。望郷を引っ提げたツアーだったが、今では考えられない札幌2days。
2日目のKLUB COUNTER ACTION。ステージが超低くて(かすかな記憶だと階段2段分くらいの高さ)演者は客とほぼ同じレベルに立っているんだけど、最前にいたお姉さんが優しくしないでの「窓辺にいるだけなのさ」の所で猛烈に拳を4回突き上げていた。それを見て、「なんて楽しそうなんだろう」と思った。曲に合わせてただ手を挙げるだけじゃない、全力で音を感じて手まで全力を込めたらもっと楽しいじゃん、絶対。次この曲やったら、同じところでこれやりたい。もっと曲とひとつになりたい という気持ちが芽生えた。
たぶんこのあたりまでがシネマに夢中になってた第一期。
あのお姉さん元気かな。

 

翌年、社会人になる。
その頃はピロウズGRAPEVINEにハマっててDB2Gを最後にシネマの新譜は追いかけていなかった。
ライブも2014年に一度行ったが、仕事や他のバンド、他の趣味(ホークス観戦)の割合が高くなり、「あ、明日シネマのライブじゃん…」と前日に思い出す始末。
ブルプリとeveはリアルタイムで買っていない。
久しぶりに行ったライブは2016年の前衛懐古主義Part1名古屋編。新譜は聴いてないけど昔の曲やるっていうから行った。ちなみにこれが初めての遠征。優しくしないでをやってくれたので前述の夢は叶った。(けど今でもライブへ行くたびにやることを切に願っている)
名古屋のパルコのタワレコで例の2枚買えばよかったのに買わなくて、展開されているところの写真を撮るだけ撮って、結局シネマ熱が再燃した2019年(後述)にiTunesで購入した馬鹿。なぜ。

 

2017年春に最初の会社を辞め、次に入った会社がまあ最悪で、毎日病んでいた。音楽なんてほぼ聴かなくなっていた。
ちなみにさっきの二枚通り越して熱源は初回盤を購入していたもよう。なぜ。
そしてその当時乱立していた違法音楽アプリがよくdigginを流してきていたせいか、これだけは病んでても聴けた。なぜ。

 

2018年〜2019年の前半辺りまで、シネマについての記憶はほぼ無い。

音楽全般から離れてしまっていたため、2018年の音楽は米津玄師のlemonくらいしか知らない。マジで。
飯田さんが休養していたことも、Name of loveやHYPER CHANTがリリースされたことも、すべて後から知った。有線でName〜が流れていたのを聴いてあれ、これシネマの曲っぽい…?とShazamしたらビンゴで、私の耳はシネマをまだ覚えていたと嬉しくなった。と思うくらい離れてた。
ライブ活動を休止したことは、バンドにおいては大きな試練だったと思う。この時を見守っていた人はどんな気持ちだったんだろう。


2019年11月22日。

奇しくも前衛懐古主義Part1名古屋編からジャスト3年、私はcinema staffのライブに帰ってきた。

その日は当時付き合っていた人と会う予定があったが、その数日前に喧嘩した。そして22日会うのやめよ!となり、予定がぽっかり空いた。シネマがその日にライブをやることは知っていた。家で一人で過ごしても虚しいだけだし、せっかくだからそっちへ行こう、と2日くらい前にチケットを取る。それがBEST OF THE SUPER CINEMAのリリースツアー。本当に軽い気持ちで行ったので音源も聴き込んでおらず、HYPER CHANTもまだ覚えて無くてあまり歌えなかったしtheme of usも記憶の彼方にうっすらあるだけで1234も手拍子もタイミングを忘れ去っていた。けど間違いなく楽しかった。その日の私の感想は、「とても優しいライブだった。飯田さんの『全部あげるから!!全っ部あげるから!!!』で無事死亡した」らしい。(当時のツイートとインスタ)

今でも忘れてない飯田さんのあの熱量。あの日の自分は優しさという形で全部受け取ったらしい。こう言っちゃ悪いけど、いつの間にこんな熱いことを言うようになったんだ、とも思った記憶がある。
「来年3月28日に人見記念講堂でワンマンをやります」「ホールでしかできないようなことも考えています」という言葉、そして3.28は自分の誕生日の翌日。これは行くしかないと帰りのバスの中ですぐさまローチケのサイトへアクセスし、チケットを取った。
結果的に人見のライブは延期になったが、youtubeで3.28のレコーディング配信をしたのを機にたびたび過去のライブ映像がプレミア配信されるようになり、酒を片手にこれを観るのが楽しみになった。
昔はあまり何も考えずに反射的に行っていたシネマのライブ、画面越しに見てもこんなにかっこよかったんだ…と気付く。メンバーがチャットに参加していてたまに國光さんや川島先生が登場したり、センスのあるリスナーのコメントを見たり、共感し合ったりするのが楽しかった。

次に行けたのは2021年6月のNDNBツアー。某感染症禍真っ只中で、床の印に合わせて立つ異様な光景。泥棒だったか萌える傘の下だったか、どちらだったか覚えてはいないけど、シネマのライブの前いつもこの声聴くよなっていう、耳馴染みのあるSE。これだけで泣けてきた。メンバーが現れた。
初期の頃はキャパが小さいライブハウスでばかり観ていたせいか、シネマのライブが気持ち的にも物理的にも近い所にいすぎて、ステージ上のメンバーがついこないだ会った友人みたいな見え方になっていた時期があった。有名人というフィルターなしで彼らを見ていた時があった。その時と変わらず目の前にいる彼らを見てその感覚を思い出した。
歌詞をその当時の世相や自分の思いに重ねずにはいられなかった3.28。野音のDVDを観て文字通りこんなドラマみたいな曲あるかよ、と鳥肌が立ったdrama。中毒のように聴いていた2011年付近の代表曲とも言える(と思ってる)君になりたい、20☓☓を2021と変えて「今」を歌ったfirst song(at the terminal)。微動だにできず、初めてライブ中に目を閉じ、「没入」という感覚を味わった僕たち、そして12年前、初めて行ったライブでも聴いたであろうKARAKURI in the skywalkers。
極夜epのリリースツアーではあったが、昔の曲から近年の曲までが網羅されていて、それはどれも自分とシネマの古い歴史を辿ったり、新しい歴史を刻んだりと、これ以上に無いほどの完璧なセットリストだった。
そして、ここまで歌詞の意味を一つ一つ噛み締めながら聴いたライブは初めてだった。
もう私の中でcinema staffはこれまで出会ったすべてのバンドを差し置いた存在になった。

延期になった3.28の、LINE CUBE SHIBUYAでの振替公演は情勢を鑑みて見送った。そしてアルバム発売、リリースツアー、野音
そして当初の予定から3年経った3.11、やっと人見記念講堂で彼らの忘れ物を回収した。
何事もなく通常通り開催されていたとしても、なにせ誕生日翌日だしということで思い入れも深かったかもしれない。
しかし再びシネマへの思いが復活したと思った途端に食らったおあずけ。渇望感の中で映像で見た彼らのライブの真価。これが結果的に気持ちを大きく押し上げたと思っている。
予定が無くなったから何もせず家にいる、もしくはライブへ行く。曲がり角を曲がった結果そんなに悪くないどころか、出会ってから今までの中で一番cinema staffが大好きだと胸を張って言える。ライブに行った回数だけではなく、一番心血を注いだのもcinema staff

 

2011年に物販で飯田さんと久野さんに言った「これからも応援します」

ああ何か言わなきゃ、ととっさに出てきた当たり障りのない言葉だったけど、今では本気で、心の底から言える。むしろ応援だなんて、私を応援してくれてるのはむしろcinema staffの方じゃないか。そして、これからもなんてヌルい。いつか死んで来世まで手を取って踊るんだ私達は。そんな曲まで彼らは作ってきたから私もそれに全力で応える。

いつかまた、環境や私自身が変わって、シネマから離れざるを得ない時が来るかもしれない。でも、この歌詞を一度胸に刻んだ私にとって、彼らの存在がいつでも心の支えとなっているに違いない。

「それでもドラマはきみの帰りを待っている。」

 

 

 

 

2009
★0405 VINTAGE LEAGUE@COLONY
w/UNISON SQUARE GARDEN
People In The Box
LOVE LOVE LOVE
Fozztone
laugh line


2010
★0908 Blue,under the imagination Release Tour 〜想像上の辻〜
@SPIRITUAL LOUNGE
w/THE NOVEMBERS
4point
spirit page


2011
★0113 スペースシャワー列伝
@cube garden
w/plenty
モーモールルギャバン
[Champagne]


★0701 two strike to(2) night〜日本シリーズ
sound lab mole


2012
★0330 壱伍列伝
@cube garden
w/カラスは真っ白
Ao
シュリスペイロフ
  

2013
★0622 【僕たちの秘法】tour
@spiritual rouge 
w/THE米騒動
★0623 【僕たちの秘法】tour
@KLUB COUNTER ACTION
w/was
bufferins
Cell The Rough Butch


2014
★0613 Death Bandwagon 2(to) Glory
@ベッシーホール


2016
★1122 前衛懐古主義Part1名古屋編
名古屋CLUB QUATTRO


2019
★1122 BEST OF THE SUPER CINEMA JAPAN TOUR
sound lab mole


2021
★0619 NEWDAWN/NEWBORN
@sound lab mole

☆1008 cinema staff two strike (2)night 回天の渋谷編
@LINE CUBE SHIBUYA

★1107 海底より愛をこめて RELEASE TOUR『はじまりの場所』
@sound lab mole


2022
☆0129 海底より愛をこめて RELEASE TOUR『はじまりの場所』
@心斎橋BIG CAT

★0501 前衛懐古主義Part3 Re:Respawn
@梅田CLUB QUATTRO

★1008 two strike to(2) night ~因縁の日比谷編~
@日比谷野外大音楽堂


2023
★0311 two strike (2)night 捲土重来の三茶編
@昭和女子大学人見記念講堂

★0708 We are Phenomenal
@sound lab mole

*1105 We are Phenomenal
@Zepp Shinjuku


(☆はチケット持っていたけど参戦見送りしたもの)